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2005年2月11日 読書
金原ひとみの『蛇にピアス』という小説を読んだ。なーんか危ない世界をしかし日常として生きる若者たちの世界が、どこか切なく、幻想的で、うまいことは言えないけど、面白かった。舌ピアスの発展系としての「スプリットタン」とは、蛇の舌のように二つに分かれた舌のこと。その舌を持つ男と関係を続ける女主人公。自らもスプリットタンに惹かれ、それをやってみちゃう。同時に刺青にも惹かれ、やってみちゃう。彫り師の男とスプリットタン男と主人公との、肉体を含めた奇妙な関係が始まってゆく。 彫り師の男がいう。「ピアスや刺青と違って(スプリットタンは)形を変えるもんだからね。面白い発想だとは思うけど、俺はやりたいとは思わないね。俺は、人の形を変えるのは、神だけに与えられた特権だと思ってるから」「(自分が神だったら)形は変えないよ。ただ、バカな人間を作る。ニワトリみたいに、バカなのを。神の存在なんて考えつくことがないように」
未来とか将来とかか、普通に過ごしてればとりあえず保証されてるようにみえるもの。とりあえずやり直しは可能そうなもの。そういうのを、自らの肉体をぶっ壊すスプリットタンや刺青で、示すっつうこと。未来なんか無えんだ、ってのを、再確認するっつうか。「普通」に生きている僕らのような普通の人たちってのも、むしろ悪あがきをしてるのかもね。未来はあるはずという悪あがき。なんか、自己責任のもとで堂々と自分の未来を破壊してみせるこの小説の登場人物たちが、むしろ現代という時代を生きる意味というものを教えてくれてるように僕には思えた。神が作った肉体に、手を加えるってこともまた、冒涜という名の開き直りだと思った。現代って、こういう世界だろな。神はここでまたも死んでるんだ。

でも小説ってすげえや。文字の羅列だけでドキドキすんだよ。ありえねえよ。今まで、マンガを描いてきたり、音楽に嫉妬したりしてきたりしたけど、こんな表現方法もあるんやな。単なる文字だぜ、新聞のと同じちっちゃい文字。それがなんでこんなにもドキドキさせるんだ?すごいよ。作者の金原ひとみは歳一つ下だよ。こんな小説僕も書きてえなあ。マンガも、描きたい。
明日は綿矢りさを読もう。いま、まだ読者な僕。

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