ノベルを述べる7

2005年6月19日 読書
今日は姉が家にきてた。なんかおごって貰おうと思って忘れちゃった。
読書解禁して何冊かもう読んでしまったが、今日読み終えて少し面白かったのが、石田衣良「うつくしい子ども」 石田衣良はあの「池袋ウエストゲートパーク」の原作者。前から読みたかったんだ。

とあるニュータウンで起きた女子児童殺害事件。中学校の裏山で発見された惨殺死体と犯行声明「夜の王子」は、小さくて静かな人口の街を震撼させた。そして、突然にして明かされた「夜の王子」の正体は、中学一年生の弟のカズシだった。[凶悪少年事件発生!!]一日にして「『少年A』の兄」となってしまったミキオ。始まった「いじめ」。マスコミが、評論家が、世論が、得意げに繰り返す事件への言説。容赦ない加害者家族への風当たり。何が正しい?真実は何処に?カズシの心の闇…「夜の王子」の真の正体を突きとめるために、ミキオはクラスメートのはるきと長沢君とともに、事件現場の裏山に集合する…。

徐々に明かされてゆく「夜の王子」の正体に、僕は引き込まれて一気に読んでしまった。ニュータウンの人工性…家庭環境…学校教育…中学生文化…どれでもいい。多分どれでもいい。大人を納得させる答えのようなものは、たくさんたくさん物語上に登場した。でも、全てを曖昧に裏切りつつ、それらは切り捨てられて、結局僕の中に残ったのはたった一つだった。
「子ども」であること。「大人」になること。

弟が起こした事件を巡り少しずつ成長を見せるミキオに、記者の山崎はこう答える。「正しさの基準を外側にではなく、自分自身の中心に据えること」 どうやらそれが「大人」らしい。
事件の全てが明らかにされた後、ミキオは矯正施設で暮らすカズシを訪ねる。面会室に現れたカズシは言う。「ここでは、朝起きてから夜寝るまでやることが全て決まっているんだ。自分の頭で考えることないしすごく楽だ。それでわかったんだ。僕は人に命令されて動く人間だ。正しいことをきちんと決められてこなしていく方が、誰にも迷惑をかけないからいいんだって。…僕は昔は悪いロボットで、今は正しいプログラムで動くロボットだ。機械はいいね。人間より全然いい…」

獲得することなく全てを与えられ、全てを創らせてもらえない現代の「子ども」。全てへの思考を奪われた故に、全てへの懐疑を向ける現代の「子ども」。

「夜の王子はそこにいた」

「夜の王子」の正体ってのは、きっと誰でもなくて、全ての子どもに存在する。そう、誰でも持ってる「心の闇」。でもそれは一方で、ピーターパンみたいに、純粋で幻想的な闇。 きっと多くの子どもは大人に問うのだろうなあ。「大人になるってことは、「正しさ」をどっちに置くことですか?外側?内側?…光?闇?」 そうね…。「うつくしい子ども」…タイトルに全ては集約されていた気がした。

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