大学1年のときに、早稲田や法政の人たちと連携して、ある映画上映会企画に取り組んだことがあった。僕は自分の大学でもチケットを売ったり、ポスターを貼ったり、PR活動に励んだりした。監督の講演会のおまけつきで、企画も成功。400人くらい入る会場を見事満員にし、大学生らしい充実感を味わったっけ。上映したのは「神の子たち」という映画で、フィリピン・マニラにある、通称「スモーキーマウンテン」と呼ばれる、夢の島みたいなゴミの山に暮らす人々を描いたドキュメンタリー映画だった。明日食べる物もなく、ゴミにまみれゴミを漁りながら暮らす人々は、「金持ちたちの出したゴミ」を糧にして生きている。これを「食物循環」とかいわれちゃあ酷く残酷じゃないかと僕は思った。
僕たちはまず「飢え」の真実を知らない。テレビメディアが報道する「飢え」は、「何とか余力を持って難民キャンプまで辿り着いた人たち」の「飢え」に過ぎないことが多い。ガリガリに痩せこけた人々、栄養失調でお腹が膨れている子ども、蠅が飛ぶ中横たわる赤ちゃん。それだけでも悲惨な映像だけど…しかしその奥にはさらに凄惨な「死体の山」が存在する。最も凄惨な「飢え」の現実がそれだ。でもそれはブラウン管には映らなかったりする。
内乱状態にあるソマリアは、戦闘で港がぶっ壊されてて、コメ積んだ大型船が入れない。ヤク中で狂った武装兵がうろついてて、まともな荷揚げも困難。何とか到着した援助物資は衛兵達が横取りし、闇市場で売りさばかれる。国連決議の多国籍軍が人道介入したけどぶっ殺されちまった。(「ブラックホークダウン」て映画があったな)水不足・干ばつ・砂漠化等の自然災害に加え、終わらない内戦、破壊されるインフラ、ただでさえどうしようもないのに、人道援助も拒否しちまったソマリアは世界で孤立しちゃってて未来がない。飢餓の裏にはまず、こういう現実があったりする、どの国・地域にも。こういうのって仕方のないことじゃんと思ったりする。
それでも、ジグレールお父さんは言う。「飢えはけっして自然淘汰でも運命でもない」と。

そう、飢餓はその国だけの問題ではなかったんだ。特に、アメリカって国のことを勉強するようになってから、僕はそれを痛烈に知ることになった。
アメリカっつう国は、日本と違って、農業超大国だ。アメリカ国民が食って吐いてブタみたいに肥え太ってダイエットしてまた食って吐いても、それでも全然食糧は余る。吐いて捨てるほど余る。あの広大な大地に、穀物を大量生産してるから。それもものすげえ合理的に。適地適作っつって、降水量多い地域は農業、少ない地域は遊牧、温暖地域は綿花、っていう風に、きっちりエリア分けして、それをあの広大な大地でやっちゃうからすげえ生産性なのだ。アメリカ農業は、面積にかける労働人口が少ない。機械でドカドカやっちまうからだ。農薬は飛行機で一気に飛行機雲みたいにまいちまう。最近では遺伝子組み換えて、害虫が死ぬ作物を開発した。農薬まく手間すら非効率らしい。機械農業は土壌に悪影響を及ぼし、農薬汚染は常に懸念され、虫が死ぬ遺伝子作物を人が食うこと自体不安がられたりして、アメリカ農業は問題点だらけだ。 アメリカでは、吐いて捨てるほどとうもろこしが作られてるけど、アメリカ人が特にとうもろこしを食いまくってるわけではない。余ってるくせに、それは「飢え」の国の人々の元には届かない。何故かというと、それは人じゃなくて牛が食うから。アメリカの牛がエサとして食うから。すげえよ。人が飢えてるのに…牛はたっぷり食ってるんだ。 アメリカ式の遊牧は、のんびり草食って牛小屋で繋がれて…なんてやつじゃない。フィードロットっつって、でっけえ敷地に牛を大量に詰め込んで、太るエサをドカドカ与えて、まるで工場みたいに、短い期間に大量の「肉」を生産する方式だ。圧倒的な生産量があの安値を維持し、結果売れて儲けなのだ。BSEなんてどうでもいいくらい、肉の大量生産が可能なのだ。
話を戻す。じゃあアメリカ農業は、なんでそんな狂ったようにしてまで生産するのか?アメリカ国民が今後一日5食になるわけでも、5倍のメシを食うわけでもない。ではなぜかっつったら、そう、輸出政策のためなのだ。誰だったか忘れたけど、かつてアメリカの偉い人が言った言葉。「農業は武器である」 ひょっとしたら、核ミサイルより強い。アメリカは農業を世界戦略の道具にしているのだ。
アメリカの牛が食っちまうから世界市場に穀物が余らない…わけはない。まだまだまだ余ってる。それを飢餓の国に渡してやればええのに、と思ったけど、現実はそんな甘くなく、はるかに残酷だったのだ。

だらだら〜っと書いちゃったな。そして僕はPRIDEを観てて思いました。いつかミルコが王者になって、そして、世界を救ってくれないだろうか、と。
−つづく−

コメント

nophoto
ゆなはな
2007年10月12日12:12

本当にこの日記を読んですごく同感しました。
何かしてあげたいと思うけど、結局何も出来ない現実をみると、いっぱい勉強して政治家になって、世界を動かしたいです。

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索