「豊かさ」って何だろう?って問いは恐らくずっと前からあって、結構多くの人が興味を持ってるのだと思うのだけど、だけど面白いことにやはり多くの人はアイデンティティーに自分らが慣れ親しんだものを選んでると思うのだ。 将来は立派な高等ルンペンになって、高度消費なんかせず、本をバカみたいに読んで、芸術やスポーツをバカみたいに嗜んで、ちょっとだけ金稼いで、外国に暮らしたりして、黒人女性をお嫁さんにしたいなー、なんて考えてるtakebonoさんにとっては果たしてじゃあ「豊かさ」ってどうなのだろうかって、時々思ったりするのです。

唐突だが僕は日本のサラリーマンたちを尊敬してる。あんなに誠実に、勤勉で、真面目に働きまくること、恐らく僕には一生できないだろうからだ。政治家や官僚、大企業、その親族達、いわゆる既得権益を持ってる奴らがどうしたってこの世を支配しながら、くだらなくふざけ合いたらたらと欲望消費を謳歌してるってのに、日本のサラリーマンたちは一生懸命に、愚直に、コツコツと日々を戦い抜いている。ささやかな「豊かさ」を得るために。そして守り抜くために。 何はともあれその姿に、やはり僕が最初に抱くのは「偉いなあ」という思いだ。

日本では「サービス残業」やら「リストラ」やら、労働者が近年色々と大変な目に遭っている、ってのは今や当たり前の状況にある。一方ヨーロッパでは、ホントにゆるゆるだらだらと人が働いてるという。平均的ホワイトカラー層は例えば朝遅く出勤して夕方早くには仕事終わりだったりする。昼御飯の時間をバカみたいにとったりする。昼食に1時間しかとらないのは日本とアメリカくらいだよと彼らは言う。残業なんかしやしない。普通に皆飲みにいくために毎日定時であがる。夢のようじゃんって思う?でも日本の労働環境の方が僕はすげえと思う。たくさんたくさん働く日本人。家族も、自らも顧みず、一生懸命働き続ける。残業も単身赴任もこなす。みんながみんな疲れてる。一時のような企業忠誠心みたいのはなくなってるように思うけど、それでも日本人はよう働くわと思う。「カローシ(過労死)」は日本発祥の世界語になっちまった。日本人の働き過ぎに世界がいつも驚いていることは、今更疑いようがない事実なのだ。
だけど働きバチの日本人労働者のおかげで、この国ではとてつもなく高水準の市場サービスが受けられるってこともまた事実だ。お店でお釣りをごまかす店員さんなんて絶対いないし(たぶん)、お喋りに夢中になって仕事しない従業員なんてのも絶対にいない。電車は1分も遅れずにやってくるし、料理店は美味しいもんばっかだ。夜遅くまで開いてるし。その他これでもかと便利なサービスが乱立してる。それに比べたらヨーロッパの市場サービス水準は劣悪を極めるのだと思う。不便でルーズで相当イラつくと思うよ。日本に比べたら例えばイギリスなんかは生産性も当然圧倒的に低いし、工場製品の品質もケタちがいだと思う。だけど、だからといってイギリス人の生活ぶりがよくないとか、イギリス人はもっと働くべきだ、とかいうことにはならない。なんでか?それは長い歴史の中でイギリスが選択した社会の在り方だから。サービス水準なんか落ちてもいいから、自分らの労働時間をギリギリまで短縮して、労働以外の生活をエンジョイしようとするライフスタイルは、イギリス人が歴史を経て辿り着いた生き方だからだ。過労死するまで働かされるけど高水準の市場サービスを受けられる日本とどっちが「豊か」だろうか? 答えは無い(と言いたい)。日本のように、労働がこんなに強いアイデンティティーとなりうるのも、価値観に基づく一つの「選択」だからだ。日本には資源もないし自給自足もできないしね。
しかし日本人から「仕事」を奪ったらホントに何も残らないのかな。いわゆる「仕事ができる」人ってやつに、僕は何の魅力も感じないし、なりたくもない。飽和した経済の中で、もう労働なんかそれほど賛美できる価値じゃない(とか言ってみてはサラリーマンにホント失礼にあたるか)。でもだからこそ、毎日勤めに出るサラリーマンを尊敬してもいるのだ。
〈つづく〉

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