最近読んだのは、白石一文のロングセラー「僕のなかの壊れていない部分」です。 とっても面白かった。イカれた主人公に共感するのはいつものことだけど、この作品の描写はどこか感覚的にぎたぎたと描かれていないそれでいて繊細な新鮮さがあった感じ。人が何のために生きているのかとか、ありふれた命題を、ただ真正面から向かい合って放り投げもせずに投げかけているような。静かな静かなそれこそ何の意味も持たないような生きていることへのアプローチが実に心をうちました。 僕も、僕の中の壊れていない部分にこそ、そいつを探して向き合ってみなきゃいけないのかもしれない。だけど一方で、結局は真理とか世界とか自分とかって、知りすぎるとおかしくなるものなのかとも思った。
−出版社に勤める29歳の「僕」は、3人の女性と同時に関係を持ちながらも、そのどれもが何らかの意義を担うわけでもなくその意義自体が深くなるわけでもなく過ごしていた。ときに「僕」は恋人や父親や愛人となり、模索するでもなき「生」の意味を繰り返す。僕のことを想ってくれる恋人。僕のことを必要としてくれるシングルマザー。僕に快楽を求めてくる人妻。そして鍵のかけない僕の部屋に出入りする2人の居場所無き若者たち。愛に憤り、喪失に対して悲しむべき僕は、どこの誰なのだろう。生まれてこなければよかった故に、僕は死ねずに生きている。現代を取り巻く生と死の分かちがたき関係は、全ての人の「ごく当たり前の想像力の欠如」において、哀しみを哀しみ返すようにそれは切なく響き渡ってゆく。
「僕には、誰かと共に生きる資格がなかった。その能力も決定的に欠如していた」
「あなたはね、この世の中のいろんなことに自分だけの違った答えを見つけようとしているのよ。あなたは誰もが得る喜びや誰もが得る満足、誰もが得る悲しみに自分の身を任すことをためらっているのよ。何か新しいあなただけの喜びや悲しみがあるべきだといつも不平ばかりこぼしているのよ」
物語のラスト。総理大臣を襲撃し殺害した左翼少年・雷太がその犯行動機を供述する。
「…別に世の中を変えようとか、首相が日本をダメにしてるとか、そんなこと考えてみたこともないっす。…実際は、俺らと一緒で、こいつが死んだって、世の中、何にも変わりやしないっていうか。まあ、そういうのを、みんなに一度教えてやりたかったってことですかね。それだっていま思いついたみたいなもんですけど。…とにかく早く死刑にでも何でもしてくださいよ。自分で死んだりするの、俺、チョー不得意だと思ってますから。」
いつか死ぬなんて当たり前のことを、僕はどこまでわかろうとしているのかな。僕は壊れたくもない。普通にtakebonoさんであるだけでいいのです僕は。
−出版社に勤める29歳の「僕」は、3人の女性と同時に関係を持ちながらも、そのどれもが何らかの意義を担うわけでもなくその意義自体が深くなるわけでもなく過ごしていた。ときに「僕」は恋人や父親や愛人となり、模索するでもなき「生」の意味を繰り返す。僕のことを想ってくれる恋人。僕のことを必要としてくれるシングルマザー。僕に快楽を求めてくる人妻。そして鍵のかけない僕の部屋に出入りする2人の居場所無き若者たち。愛に憤り、喪失に対して悲しむべき僕は、どこの誰なのだろう。生まれてこなければよかった故に、僕は死ねずに生きている。現代を取り巻く生と死の分かちがたき関係は、全ての人の「ごく当たり前の想像力の欠如」において、哀しみを哀しみ返すようにそれは切なく響き渡ってゆく。
「僕には、誰かと共に生きる資格がなかった。その能力も決定的に欠如していた」
「あなたはね、この世の中のいろんなことに自分だけの違った答えを見つけようとしているのよ。あなたは誰もが得る喜びや誰もが得る満足、誰もが得る悲しみに自分の身を任すことをためらっているのよ。何か新しいあなただけの喜びや悲しみがあるべきだといつも不平ばかりこぼしているのよ」
物語のラスト。総理大臣を襲撃し殺害した左翼少年・雷太がその犯行動機を供述する。
「…別に世の中を変えようとか、首相が日本をダメにしてるとか、そんなこと考えてみたこともないっす。…実際は、俺らと一緒で、こいつが死んだって、世の中、何にも変わりやしないっていうか。まあ、そういうのを、みんなに一度教えてやりたかったってことですかね。それだっていま思いついたみたいなもんですけど。…とにかく早く死刑にでも何でもしてくださいよ。自分で死んだりするの、俺、チョー不得意だと思ってますから。」
いつか死ぬなんて当たり前のことを、僕はどこまでわかろうとしているのかな。僕は壊れたくもない。普通にtakebonoさんであるだけでいいのです僕は。
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