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2005年11月16日 読書
風邪は半分くらい治った。でもまだ少し頭痛い。

最近、村上龍の『半島を出よ』を読み終えた。登場人物総計100人以上。上下巻ハードカバー。合計1000P以上の大作でした。 まあまあ面白かった。日本という国がいかに現実的危機に対し無力で平和ボケした国かということを読んで改めて思い知った。

−西暦2011年4月。北朝鮮のコマンド9人がプロ野球開幕戦の福岡ドームを武力占拠。2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が福岡市に来襲。彼らは一様に北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。 経済が破綻し国際的孤立を深める近未来の日本に起こる戦慄のクライシス!九州は日本から遮断され、福岡は日本政府により封鎖された!占領下の福岡を舞台に繰り広げられる群衆劇と人間ドラマ!博多湾に12万人の北朝鮮後続部隊が接近する中、ある若者グループが決死の抵抗作戦を開始した!!

「反乱軍であって反乱軍ではなく、反乱軍ではないが反乱軍でもある。…君たちは、ホンギルトンのように、福岡及び九州に新しい国を造るために半島を出たのだという声明を出す。…日本帝国主義の圧政に苦しむ福岡及び九州の人々を解放するために、正義と自由を与えるためにやってきたのだと言うのだ。それはメッカを攻撃したムハンマドが主張したことと同じだ。またそれは十字軍の主張でもあり、アジアを侵略した日本帝国の主張でもあり、ヒトラーの主張でもあり、ナチスを打ち負かした連合軍の主張でもあり、アフガニスタンやイラクを侵略したアメリカの主張でもあった。ホンギルトンは歴史的であり、普遍的であるのだ!」

物語後半は震えながら読みました。若者テロリストグループVS北朝鮮軍の死闘は壮絶でしたが、前半引っ張った分あっさりだったかな。でもかなりドキドキした。 危機に対し無力すぎる我が国・日本で、その危機に唯一勇敢に立ち向かったのが若年テロリストグループだったってのも面白かった。

シーホークホテルでの最初で最後の本物の戦闘を前に、遂に恐怖に目覚め始めるメンバーの中で、テロに魅せられた年齢不詳男−カネシロだけが、死体と血の海の中で誰も知ることのなかった初めての笑顔を見せる。
「…見ろ。これがおれがずっと夢に見てきた世界なんだ。他にはもうどこに行ってもこんな世界はない。やっと見つけたんだ。だからおれはここに残る。自分でここを始末する。おれの世界だからおれが自分で壊すんだ。」

若者たちの中に息づくそれぞれのテロリズムは、福岡を占領する北朝鮮軍との戦いにおいて凄絶に帰結してゆく。それは本当に凄かった。 一方で、福岡に降り立った北朝鮮軍中尉チョ・スリョンは、日本の「退廃」と同時に自国の「退廃」にも気付き始める。そして処刑式を巡って己の精神の在処に気付く女性士官キム・ヒャンモク。最後の瞬間まで兵士で在ろうとするチョ・ヒョイル。北朝鮮軍の悲哀もまた本当に凄かった。 狂気によって恐怖を制する若者たちと、恐怖によって狂気を制する北朝鮮兵士たち。それぞれがそれぞれの精神の下での戦いを、封鎖された福岡の地で繰り広げる。僕は2011年の日本に起きた知られざる聖戦の真実を知った。

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