戦後日本の高度経済成長から生まれていった「新中間層」。それは所謂サラリーマン家庭の増加。そしてそれはかなり多くの人たちが自分たちのことを「中」と感じるような時代。そんな日本社会らしい日本社会が近年崩壊していくという。圧倒的多数であった「中」は、「上」と「下」に分裂することで減少していく。だけど決して餓死者が出るようなことはない。

金融広報中央委員会(事務局・日銀)が発表した最新の調査で、「貯蓄を保有していない」と答えた世帯(除単身)の割合が全体の23%であった。これは53年の調査開始以来、過去最高の数字だという。現在の日本の景気は回復基調にあり、全体平均の金融資産保有額は前年比で増加してるが、より多くの世帯の実感に近いとされる「中央値」てのが減ってるという。つまり全体の貯蓄平均は増えてるのに、多くの家庭では「貯蓄は減った」と感じていることになる。これ一体どういうことか? 「統計の誤差の範囲の動きで、格差が確認できるほどの変動はない」と、同委員会は言う。
所得格差の不平等度指数である「ジニ係数」の増加はもちろん、90年代に入ってからは人々の意識にも明確に格差が表れてきたと筆者はいう。かつてどの収入階層でも階層意識に差が無く、半数以上の人が自分のことを「中の下」と回答したが、95年調査では上層20%の人たちの半数が自分のことを「中の上」と回答している。バブル後には「中の中」が減り「中の下」と「下」が増大。戦後の大衆消費社会が作り上げた国民過半数の「中の中」意識に解体がみられ、その分「中の下」「下」が増えたと見られている。一方で「中の上」は10%前後を維持している。全体は下降傾向にある中で、上層意識の%は維持されている。これ一体どういうことか?

「上」と「下」への二極化が進んでいるとして、それは消費社会に何をもたらすか。これまでのように国民の多くが中流を目指すため或いは中流であることを確認するための消費をしなくなることがいわれている。中流であることを象徴するようなものはもう売れなくなるのだ。いやそもそもそんなもんあるのか?僕がいま周りを見てみると、TVがありPCがありDVDがある。マンガがあり本があり大量のカップ麺とペットボトル飲料がある。近所に図書館とコンビニとレンタル店とサッカーできる場所があれば、中流でも中流でなくても僕は今のところあと何も欲しくない。こんな意識がそもそも豊かな時代後に生まれた僕らの考え方ではないのかな。第三次産業における過度なサービス精神すらうぜえと感じる僕らのようなアフターバブル世代が、構造改革の遅れと共に不況をキープしているのかもね。 物が売れなきゃ死ぬしかない企業はそれじゃ参る。リストラだけじゃ限界が来るし、価格競争でも限界が来る。「一億総中流」期には中流トレンドだけを追い、中流向けの商品を大量生産してきた日本企業は、「中流」が解体する今、階層別商品生産計画を立てねばならなくなっている。二極化が進む中で、中流社会モデルのままに経営を続けた百貨店業界は軒並み敗れ去っているのだ。

「財布に金が無えんだよ。買えるわけねーだろが。そんな高え品物無理だろが。ボケが」って人が多分どこにでもいて、もちろんそれは「下」の人たちで、だからユニクロ現象とか起きたりして、結局デフレとか言われたりして。「中」が減る中で「中」に向けて商品を売っても売れないし、「下」に向けて売っても儲からない。じゃあどうすっかって。「上」の人たちに「上」の物を買わせればいいじゃんよ。もっと言えば、商品戦略を階層化するってことだ。膨大な中流のために大量の物を売る時代は既に終わり、利益の最大化は新しいビジネスモデルへのシフトになった。

2003年新宿伊勢丹メンズ館は高級化路線に転換。百貨店といえば中流の部長・課長へ向けた紳士服売場であったがそのスタイルを改め、まさに「上」に向けた差別化によって生まれ変わった。 世界観の狭い僕の周りでも、六本木ヒルズが登場したし、億ションが結構売られていってるらしい。金はあるところにはありやがるのだ。ちっとも不況じゃない。 トヨタは8月、「一部の富裕層」に向けてレクサスを投入。55年体制の始まりとともに登場したトヨタクラウンは、「カローラ、コロナ、いつかはクラウン」という典型的階層上昇型消費モデルの象徴であったというが、レクサスは「いつかはレクサス」なんかでは当然売られやしないだろう。 僕は一連の市場メカニズムの蠢きを賞賛すべきだろうか。わからないけど、どこからか取り残されていく気がするのは、僕が「下」だからか?それともtakebonoだからか?
“つづく”

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