ノベルを述べる21

2005年12月10日 読書
糸山秋子の『ニート』を読んだ後、これなんだか涙が出てきそうでした。
−どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった。キミはあらゆる権利の外にいて、健康だが働いていないし働く気もない。つまりキミはニートだ。キミは自分が社会から援助を受けることができないのをよく知っているし、他人からの援助を受けるには申し訳ないと思っている。とても失礼なことを言うけれど、キミにはニートの方が向いている。似合わないスーツを着るよりも。…なぜかは判らない。他の誰でもなくキミを甘やかしてやりたいと思う。…なぜかなんてそんなこと、どうでもよくないか?社会から駆逐されかけた人間にまだ理由が必要なのか?…その問いを今まで発することが出来なかったのは、キミがあまりにも弱すぎたからなのだ。だけど私はキミが不意に示すさりげない好意に打たれる。…それは不器用で、ささやかで、私が覚えていなければキミは明日にも忘れてしまうほどはかないことだ。

静かな文章が心を打ちました。現代社会の歪んだ構造が生んだニートだけど、彼らは優しい弱者でもあった。
残りの短編はスカトロとかでイカれてました。

その後読んだのは赤坂真理『ミューズ』。イカれた少女の話。
−崖の上の矯正歯科医がつけてくれた私の歯の裏側の金属。ミューズの匂い。赤髭。シェイバー。ピン・アンド・リガッチャー・カッター。そんなそれらはオーガズム。

この手の話はもう充分だな。僕にゃよくわからん。狂ってるって自覚はもうあまり起伏が無い。やっぱ差異だよ。差異。大衆社会そしてやってくる下流社会において、まだポップかつソウルフルなものは在るように思うのさ希望的観測。
現代小説のイカれ所か。そろそろまた前世紀の気品ある文学作品を読もうかな。

夜は兄が帰宅しました。軽く飲んでバカ笑いしました。ヒザの恐ろしさを知りました。

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