◇灰谷健次郎の『海の図』を読みました。長編だったがあっさり読んだ。改行多いし、読みやすいのなんの。そしてさすがに灰谷作品はヒューマニズムに満ち溢れてるな。これは80年代って感じだ。素晴らしいものは揺れ動きながら尚素晴らしかった時代だ。左系と言われればそれまでなのだが、こんな作品すてきじゃんて僕は思う。10年前に読みたかったな。こんな時代もあったのだし、こんな作品もあったのだ。もっともっともっと本を読めばよかった。いまそう思う。だから、いまもっともっともっと本を読むのです。
−瀬戸内海の小島の高校3年生沖島壮吉は、登校拒否を続けていた。海と島を誰よりも愛した亡き父が、あるとき漁業を捨て、電力会社の開発に手を貸していたという事実を調査するためにだ。壮吉がいかなくなった学校では、教師−生徒の対立関係が紛糾を極めていた。ある日の港で、壮吉は都会からの転校生・英世と出会う。心に傷を持つ彼女の存在に、壮吉は確かに動かされながら、前進するために歩き出すのだった。 一人の島の少年が抱く幾多の思いは、かけがえなく純粋な、全ての現代人へのメッセージでもある。takebonoの胸に、それは確かに突きつけられた。この社会の明日に希望を灯す、感動長編作品。

沖縄からきた五郎が壮吉に語りかけるシーンがいいですね。すごくいいです。
「自ら、生きるっていうのかな。自分たちの土地で自分たちの海で生きていく力だよな。長い歴史の中で確かめられてきたものを、どうして豊かにするかということを考えていけば、本物の自立が必ず果たせられると信じているんですよ。おれたち、やがて、ふるさとへ帰るさ。…沖縄にはね。自然のあらゆる生命はもちろん、木も水も土も、みな人間の生命のひとつだっていう強い思想があるんです。そいつが生きているうちはおれたちの島は、いつまでも美しいさ」

数々の人たちとの出会いを経て、そして学校に戻ってきた壮吉が教室でみんなの前で語るシーンがすごくいい。壮吉の成長がすばらしかったですよ。
「…そして、それがものすごく本気だった。自分の不幸も、そっとしておきたいことも、みんなぶっつけて、おれにつき合ってくれたです。…おれ、人間はいいなと思った。人間はみんなええなと初めて思った。そう思ったら、世の中というかおれたちの住んでる社会がどんなものか、ぼんやり分かったような気がしたんです。…人間は自分のことだけを考えているうちは何も見えんワ。この社会と学校が敷いているレールは、文明社会のエリートへの道らしいが、おれはそのレールを自分でつけ変えたい。…この島の人間が、この島の自然と生命を大事にして、この島で生きていくことのできるレールを自分でしっかりつける」

静かに感動しました。

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