◇前から読みたかった京極夏彦『姑獲鳥の夏』やっと読みました。なかなか、なかなか、面白い。言うならば、攻殻機動隊みたいなネタが、民族伝承や民俗学と絡む辺りが素敵。京極シリーズ全部読もうと思いました。
−「20ヶ月もの間、子供を身籠もっていることができると思うかい――?」
昭和27年の夏――東京・雑司ヶ谷の古い病院で、その世にも奇怪な事件は発生した。鬼子を宿した女。密室から消失した夫。呪いの血筋。灰色の記憶。そして――姑獲鳥(うぶめ)。 本格ミステリ界に賛否両論の大旋風を巻き起こしたという京極夏彦の恐るべきデビュー作。
その怪奇性に惹かれながら、takebono夢中で読み終えた。古本屋陰陽師・京極堂は言う。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」と。
◇坂口安吾の『白痴』読んだ。もうどうしょーもねー堕落ストーリーの総集編。さすがデカダン派観念的私小説のカリスマ安吾。『堕落論』をそのまま小説にもっていった感がまざまざある。『堕落論』読んでても思ったんだけど、takebonoの文章と雰囲気が似ている理由がわかった。安吾は「魂」という言葉をよく使うからだ。それは僕の「ソウル」と似ている。言葉では説明しきれぬものに対して在る、自分だけの観念のようなもの。そしてその「魂」の行方こそが、安吾が文学の先に見つめていたものだった。だから彼はこんな文章が書けるのだと思う。
−白痴の女を押し入れから引っ張り出し、私は焼夷弾の雨を逃げまどった。何もかもが焼け、その跡だけが残り、生きるために灯されていた何もかもが消え去っていた。それでも人はよろよろと生きている。寒すぎる今朝に、自分と自分の隣に寝ている豚の背中に、太陽の光はそれでもきらめいて降り注ぐだろうかと考える。いずこへ。いずこへゆくのか。
安吾の言葉は、刹那的で、退廃的で、病的で、卑屈で、自虐的で、すごく人間的、そして、何よりも優しく、何よりも美しく、リンダリンダ的に僕に語りかけてくる。圧倒的な孤独と生の輝きがそこにはあって、僕の高ぶる脳の周波を鎮めてくれたりもする。安吾の声が聞こえる。優しい声だ。彼はがんばれなんて決して言わない。前を向こうだなんて決して言わない。あいだみつをなんてクソクラエ級の言葉たちだ。
死ぬな。死ぬなよ。生きろ。生きよ。生きて、堕ちよ。
それは僕にとって、涙が出るほど欲しかった言葉たちだった。
−「20ヶ月もの間、子供を身籠もっていることができると思うかい――?」
昭和27年の夏――東京・雑司ヶ谷の古い病院で、その世にも奇怪な事件は発生した。鬼子を宿した女。密室から消失した夫。呪いの血筋。灰色の記憶。そして――姑獲鳥(うぶめ)。 本格ミステリ界に賛否両論の大旋風を巻き起こしたという京極夏彦の恐るべきデビュー作。
その怪奇性に惹かれながら、takebono夢中で読み終えた。古本屋陰陽師・京極堂は言う。
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」と。
◇坂口安吾の『白痴』読んだ。もうどうしょーもねー堕落ストーリーの総集編。さすがデカダン派観念的私小説のカリスマ安吾。『堕落論』をそのまま小説にもっていった感がまざまざある。『堕落論』読んでても思ったんだけど、takebonoの文章と雰囲気が似ている理由がわかった。安吾は「魂」という言葉をよく使うからだ。それは僕の「ソウル」と似ている。言葉では説明しきれぬものに対して在る、自分だけの観念のようなもの。そしてその「魂」の行方こそが、安吾が文学の先に見つめていたものだった。だから彼はこんな文章が書けるのだと思う。
−白痴の女を押し入れから引っ張り出し、私は焼夷弾の雨を逃げまどった。何もかもが焼け、その跡だけが残り、生きるために灯されていた何もかもが消え去っていた。それでも人はよろよろと生きている。寒すぎる今朝に、自分と自分の隣に寝ている豚の背中に、太陽の光はそれでもきらめいて降り注ぐだろうかと考える。いずこへ。いずこへゆくのか。
安吾の言葉は、刹那的で、退廃的で、病的で、卑屈で、自虐的で、すごく人間的、そして、何よりも優しく、何よりも美しく、リンダリンダ的に僕に語りかけてくる。圧倒的な孤独と生の輝きがそこにはあって、僕の高ぶる脳の周波を鎮めてくれたりもする。安吾の声が聞こえる。優しい声だ。彼はがんばれなんて決して言わない。前を向こうだなんて決して言わない。あいだみつをなんてクソクラエ級の言葉たちだ。
死ぬな。死ぬなよ。生きろ。生きよ。生きて、堕ちよ。
それは僕にとって、涙が出るほど欲しかった言葉たちだった。
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