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◇大崎善生のロングセラー『パイロット・フィッシュ』。村上春樹に似てた。『ノルウェイの森』にすごく似てた。透明感溢れる文章というのはこうゆう作品のことを言う。
−「パイロット・フィッシュ」――生態系を作るためだけに、一番最初に水槽に入れられる魚。
生態系の中で僕らは出会う。
「それは、どんな長い長い旅にも、必ず終わるときがくるということに似ている」
水槽の中の、あまりにも透明な水のせいで、僕らはそんな風に出会う。忘れられないものを増やすこととは、そんな風に時間の功罪を生むことだということを、感性を主戦場にした20代の果てに僕らは知った。記憶の集合体はそんな風に僕らを追いつめてゆく。
「一度巡りあった人間と、一度発した言葉と、人は二度と別れることはできない」
それもまた、あまりにも透明な水のせいで。僕たちは生きているのだ。曖昧な優しさを糧に。透明な水を世界に。僕たちは記憶の中を泳いでいるのだ。
人間の想いというやつは、これほどまで切なく透明なものだろうか? 「優しさ」のかぎりない力を描く、永遠の青春小説。
takebono的にはストレートなんだろう。真っ正面から読んでしまった。なかなか透明な気持になれた。

◇舞城王太郎『熊の場所』読んだ。舞城ワールドはほんとにすごい。これ傑作です。
−「まー君」が猫を殺して切り取った尻尾をコレクションしてた。僕はとんでもねえ恐怖を感じてしまって、そして思い出した。かつて熊を殺した父親が言っていたこと。
「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない」
そして僕は「まー君」と仲良くなる。
ある日、近所の犬が行方不明になった。そして近所に住む小学生も行方不明になった。僕らは笑いながらサッカーボールを蹴って遊ぶ。「まー君」と僕との戦慄の友情物語。
舞城王太郎は天才だなと思った。

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