少女Aは今日も時間通りに現れた。ほんとにこのコは遅刻をしないのだ。
彼女が取り出した電子辞書のフタ(?)の部分が、3分の1ほど銀色になっていた。よく見ると、小さい銀色のビーズみたいなやつが規則正しく1000個くらい並べられて張り付いてた。よく女子高生がケータイとかにつけるやつだ。びっしりと岩にへばりついてるフジツボのような不気味さだった。
「な、なにこれ?」
「ヒマだったんでェ」
「1個1個付けたん?」
「ぼけなくなりますよぉ」
ニコッと笑って英語のテキストを開く少女A。

で、今日も勉強を教えつつも、ザッツ雑談☆

最近の少女A、小説を書き始めたらしい。出版社への持ち込みと賞への応募の仕方を聞いてきた。勇敢だ。
ラストをまだ決めてなくて書いていないから、一緒に考えて下さいよォ♪だって。うおお超超超読んでみたい!
「ジャンルはなに?」
「え、妄想…です」

ストーリーはこんなかんじ。
◆プッシャーをやっている暴力彼氏Bと別れた平凡な女子高生少女Aは、ある日街で偶然出会った3歳下の少女Cと恋愛関係に至る。蜜月の中で少女Cの現在の彼氏がBであることを知ってしまった少女Aは、錠剤型ドラッグを利用してBを殺害。Bの死を知ったCは自殺。独りぼっちになった少女Aは包丁を持ってディズニーランドへ向かう――。

「バッドエンドにしたいんです」
「すさんでるね」

で、勉強を教えつつ、延々と小説とかマンガの話をしてた。
岡崎先生の『リバーズ・エッジ』を薦めておいた。
何もかも与えられ、創らせてもらえない平成世代の無間地獄。

「『蛇にピアス』って読みました? あれ、ピンときたんですよね」
「金原ひとみは20歳そこそこでアレ書いたんだよ。君もがんばってイカれた文章書いてくださいよ」
少女Aがうふふって笑った。

「実は…やっちゃったんですよね」
「は?」
少女Aがニコッと笑って、ペロッと、舌を出した。

ゲッ…!?

舌ピアス――!?
ボルト付きのネジみたいなでっけえやつ。
銀光りしたままそれは舌のド真ん中を貫通していた。
少女Aが「レロレロ♪」ってやったらカチャカチャ鳴った。
16歳の少女の舌を貫く金属。
象徴的、だとして。
これは、何のどんな象徴なのさ?
セーラー服に短くもないスカートに英語のテキストに、舌ピ。

「親と学校に、バレたらヤバイですよお」
「バレない…もんなの?」
「バレないですよお、今だって話しててもわかんなかったじゃないですかあ。そもそも、話とか…しないしぃ」

間違いない。
恐らく。
こいつタトゥーもやってる。

おいおい金原ひとみー!
少女A、スプリットタンやりかねないぜ!

最初からどこかに。
このコに感じていた僕のソウル。
ヒットした。
やっぱりこのコはカラフルダークだった。

親や学校、そしてもしかしたらクラスメートさえも気付いていないのかも。
そう。
言葉の端々に、匂ったこと。
もし。
もしドラッグをやっていたら。
僕が止めるしかないな。
僕にだけ見せた一面ではないことをただ祈りたい。
見なきゃよかった、と思いたくない。

「16歳のうちに書き上げますよ☆」
「が、がんばれ」

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