◇京極夏彦『邪魅の雫』。
妖怪シリーズ最新刊。こないだでたばっかでもう読んだ。
確かに京極ワールドなんだけど、もはや妖怪関係ないやん。猟奇性が薄れてきたし、憑き物落としも勢いが落ちてきたか。ただ例の如く長いので、前作に続きダラダラ感で閉幕といってもよいか。

「ひとごろしは報いを受けねばならない」
昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と、連続毒殺事件が発生。
事件を連鎖させるは一粒の黒い雫。
錯綜するは邪気。
「邪なことをすると──死ぬよ」

心に取り憑くは──邪魅。
邪願成就なるとき、世界は誰のものでもなく、そこに。
次々と現れた最重要容疑者たちが、次々と消される中で、邪悪な真実が暴かれる。
歪んだ世界を歪み戻す。
京極堂の憑き物落とし。

「殺してやろう」
「死のうかな」
「殺したよ」
「殺されて仕舞いました」
「俺は人殺しなんだ」
「死んだのか」
「──自首してください」
「死ねばお終いなのだ」

「言葉というのは全部嘘だ。だから言葉で綴られた物語も全部嘘だ。記録も記憶も現実じゃない。正邪や善悪と云った概念は、この嘘の世界にあるものなんだ。
僕は最初に云った通り──世界を騙るものですよ。

貴女の世界も騙ろうか。
この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君──」


今回は「殺意」かなテーマ。本当にちっぽけな世界でちっぽけな人間が抱く邪念は、本当に僅か一つのミスその一滴だけで取り返しのつかぬ闇を生むのだ。邪魅は誰の中にでもいるな。

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