なんでもいいから小学校の頃の記憶を覚えているかい? あの小さなブルーダークはもはや次元や時空さえ超越するものだとは思わないかい? 精神世界さんの構造も、シナプス氏の形成も、イデオロギィ坊やも、比較しようがないほど今とあの頃は異なるはずだ。ここまで、こんなふうに、どうしようもなく生きてきた僕が、これまたどうしようもなかった小学生時代なんかを振り返ってみると、あの時代の行動様式は、実に今では形容しがたい世界観なり感覚なりで成立していたということに気付く。つまり、今の僕らは既に、大人なんだ。
教職課程の教育原理では、コメニウスの次くらいに出てくるJ・ロックの「タブラ・ラサ」は、要するに「子ども=白紙」論なのだけど、それに対しルソー派が子どもは「芽」であるとか言ったりして。そこで僕は思う。あれは、白日夢のように、豆腐のように、原始の白い記憶だ。

なぜそんなことをしたのか――?という問いは、他人からもそして自己の内にもある。
僕の場合それは、決まり文句への分かり切った回答だ。
「それが、真っ白だったから」だ。

今回は、小学生の頃の記憶だ。誰しも無限に抱えるエセトラウマは、その実体なんて確認できやしないほど陰鬱だ。ともかくあの時代はただ閃光のように白い原始時代だった。どうしようもねえことは数え切れないくらいあったけど、こびり付く一つの記憶は今尚拭いきれない。故に書き残しておきたい。


ガスッッ!!!と音がした。僕がそいつを殴りつけた音だった。
あらゆる感情が渦を巻いていた。〈怒〉や、〈憎〉や、〈悲〉。だけど、瞬間のほとんどの部分はそんな風にカテゴライズできるものじゃなく、ただただ真っ白な感情の渦だった。そうだ。あれは真っ白な感情のカーテンだった。核が炸裂したように白い閃光の中で、ただ一人の人間を傷つけるためだけに、僕の全身は躍動した。
「うえッえッッ!」って呻いて。ドダンッッ!!!っと。そいつはアスファルトの路上に転倒した。
倒れたボブサップの頭を狙って渾身の力で蹴り込もうとする藤田和之みたいに、僕はさらに回り込んでそいつの顔面をメッタメタに蹴りつけようかと思った。しかし僕は、しかし、そこで、やめた。
僕は復讐を恐れた。僕は罪の意識を恐れた。ただひたすら、暴力の巻き起こす醜悪で吐き気さえする心臓の鼓動を恐れた。脈が速まる。なんでこうなった? 誰がこの結果を望んだ? それは、数分前にはニタニタと笑っていたそいつへの、制裁だった。

許されようとも思わない瞬間にそのときはくる。何かを許せずにそれはキレたのだ。ぷつんとキレたのだ。負荷が張りつめて張りつめて、崩壊や革命みたいに、弾け千切れるときに、白光が闇を覆ったのだ。
白い闇に包まれたとき、細胞が自我を裏切った。

暴力による秩序の構築。拳による平和。このときの僕はそのおぞましさを初めて知ったわけだ。自らの衝動と、相手が流す血によってである。
僕はその日以来、エンタメ以外の現実世界の暴力に、吐き気がするようになった。

暴力は、暴力を確かに生む。
そして、恐怖と絶望こそが暴力を生む。

相手がナイフや銃を構え、ミサイルを持ち出したとき。
無抵抗者を少しでも傷つけたとき。
かけがえのないものを奪ったとき。
恐怖と絶望による暴力に、「正義」が与えられ、「正しい暴力」はそこから地獄の連鎖を始めるのだ。

ギリギリの、最後の瞬間まで、僕は愚かでもいいと考える。
暴力を、否定するだろう。
悲しみの連鎖を断ち切るために。
暴力を、否定するだろう。

☆今回のブルーダークメモリは小学生の頃に僕が同じ学校の子を殴ったときの嫌な記憶でした。そいつはいつも僕をいきなり殴りつけておきながら笑って逃走する最低の奴でした。僕は足が遅かったので追いかけられず毎回イラついてたわけ。ある日に、僕が善意からとったある行動を、彼が見事に踏みにじったことがあって、そしてまたしても彼は僕を殴りつけて逃走しようとしたので、僕はいい加減にイラララっときて襟首つかんで引き倒して思い切り殴りつけたわけです。「この野郎死ね」と思ったよあんときは普通にね。そんでそんとき多少殴りすぎてしまったんですね。僕は数発だったと思ったんだけど、何十発も殴ってたのかもしれない。そいつは泣きながら道路で血を流してました。そこで暴力に酔ってる自分に気付いたわけです。客観的なら「正当な防衛」なり「報復」なり理屈付けられるんだろうけど、僕はああゆう類の暴力とは、実に真っ白なもんだとそこで思ったわけです。PRIDEのリングみたいな白さです。あの白さは、正義とか悪とかそんなものを超えた領域だと思う。自分の中の神が一瞬だけ罪を見逃すために目を瞑った、そんなような感覚。 とにかくそれ以来彼は僕に近づかなくなった。僕は降りかかる火の粉を「仕方なく暴力で解決」したわけでした。 今だから言えること。恐ろしいことだけど、正当性の名の下の暴力は昂揚感がありました。それが最低に嫌だった。
あの白い暴力は、二度と見たくない。ブルーダークで、良いのです。
【END】

今日の栃東
● 白鵬 (寄り倒し) 8勝4敗 ………うぇえ。

今日のtakebono
・早起きした。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索