◇村上春樹『国境の南、太陽の西』

またしても久しぶりに春樹。

−小学校時代、同じ「一人っ子」の女の子の友達が出来る。25年後、2人は再会し、激しい恋におちた。
日常は、喪失感と共に過ぎ去り続ける。愛されていたものは、変わらない僕であり、致命的に欠落な僕だった。
「でも結局のところ、僕はどこにもたどり着けなかったんだと思う。僕はどこまでいっても僕でしかなかった。僕が抱えていた欠落は、どこまでいってもあいかわらず同じ欠落でしかなかった。どれだけまわりの風景が変化しても、人々の語りかける声の響きがどれだけ変化しても、僕はひとりの不完全な人間にしか過ぎなかった」

いつのまにか、とでも言うべきなんだろうか。心地よさと吐き気を伴いながら。僕たちはいつのまにか、何かを語れるくらい、恥ずかしげもなく、自分を特別に思いこみそして追い込むんだろう。他人に触れたくて仕方がなかったあの頃とは、寂しさとは何かも実はまだよく知らなかった時代のことだったのだ。
欠如を修正してゆく過程で僕たちは大人になってゆくという。
その欠如そのものへの喪失感が残っているのだから、たまらない。

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