こないだお好み焼き食べたときに、ふと胸に沸き起こるものがあった。
お好み焼きを食べるたびに思い出すのは、クールで熱かったあいつのこと。
takebonoくんよぅ、あの熱い夏のブルーダークメモリを憶えているかい?と、僕の耳には今でもとりわけ彼のクールな声が聞こえたりするのだ。
今回は熱い話。


Hに出会ったのは、僕が大学1年のときで、あのメチャクチャに暑く熱い夏の、広島だった。
あのときHは「お好み村」で、具がメチャメチャに入ったお好み焼きにかぶりつきながら、現代世界の地域紛争のことかなんかについて、友人と語り合っていた。隣のテーブルにいた僕はその話が何故だか妙に興味深くて、お好み焼きとビールジョッキ片手にあっさりその卓に移り、あっさり会話に紛れ込んで、これまたあっさりと僕らは友達になった。
Hは(おそらく)2歳年上の大学3年生で、茶髪にグラサンで不気味な目つきをした兄ちゃんだったけど、平和を愛する優しい男だった。指輪やら腕輪やらがジャラジャラで手首から先が重そうで、とんでもなくプライドを気にしつつもたまに自分を見失ったりもする男だった。

夜中にHの部屋に集まって少人数で議論したことがあって、某超有名大学のK君がHの安全保障論に噛み付いて空中戦になり、傍らにいたA君がウヘウヘと笑ってたことにHがキレて「おれが話してンだろがッッ!!」と枕をぶん投げて壁に叩き付けて一触即発になったことがあった。あのとき僕は「やめろやめろ!」と間に入って、ウンザリした。平和のための議論で戦争、バカみたいだと。
「Hと議論?やめた方がいいね」と誰かが言ってた理由がそのときやっと分かったわけだった。

僕が広島を発つ日、高速バスの発車時間ギリギリまで僕らは二人で飲んでいた。僕らは本当にいろんなことを語り合った。まるで昔からお互いを知っていたみたいに、それは穏やかで激しくて多様で熱く厚く深い会話だった。
昔マンガを描いてたんだよ、と僕が言ったとき、彼はジョッキのビールを飲み干してから言った。
「じゃあtakebonoくんはさ、『ナニワ金融道』読んだ? おれの部屋に全巻あるんだけどさ、今度貸してあげるよ。おれいま経済学部なんだけど、学部選んだのは、アレ読んでから世の中への考え方が少し変わったからなんだよね」

そして僕らは路面電車に乗っている間も語り続け、広島駅の高速バスターミナルで、
「東京で会おうや」と、握手をして別れた。

会えるわけねーよなーと思ってたら、Hは本当に東京の某有名大学の学生だったわけで、その数ヶ月後には僕らは実際に新宿で再会して飲んだ。
Hはそこで、僕にある学生イベント企画の話をした。夏にも聞いたことはあったけど、ハッタリだと思ってたし、企画倒れが常の学生イベントだからどうだかなァと思ってたけど、Hは真剣だったんだ。
それはHが指揮をとり行う、T大とH大とM大とW大と…あらゆるHの人脈を駆使するアングラのインカレのようなビッグイベントだった。
takebonoくんの大学にはおれの人脈が薄いから、手伝ってくれないか?とHは言った。
夏のときを遙かに超える数乱立するビールのジョッキの隙間をぬって、何かを繋げるように、僕らは再び握手をした。
【つづく】


2年も残してたブルダクメモリ。

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